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新英語教育研究会神奈川支部HP

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2007 名和 雄次郎さん:リーディング指導

●講演:「中学・高校における英語リーディング指導の勘どころ」
                 名和 雄次郎さん(拓殖大学名誉教授)
ご講演自体がひとつの授業の模範となっていました。中3の時に山形で終戦、そして東京に来られてから後の教員として歩まれたころのエピソードから、ユーモアにあふれた温かなお人柄が伝わってきました。英語教員としての心構え、生徒に寄り添った実践と研究を教えていただきました。名和先生、どうもありがとうございました。

(1)名和先生
・ 1930年生まれ。中2~3年は動員のため、勉強する環境になかった。山形空港を作ったり、黒松の根を抜いて蒸留して燃料をとる作業をした(近年になってその黒松のあった場所に行ったがまったく木が生えていなかった)。
・ 中3の時に山形で終戦、懐疑主義になった。優秀な友人は仙台の学校に進んだが終戦後に学校に来なくなった。教員や親の言うことも腑に落ちなかった。社会科の船山先生のように哲学をやろうと思ったりした。
・ 東北学院大から早稲田大の夜学へ。

(2)出会い
・ 教師自身にあった、自分の信念に基づいた指導を!
(「間違ってもいい」というコメントが名和先生からありました。教師は信念を持つことが大切なのですね)
・ できるようになったことを手をかえ品をかえ、何度でもやらせる
  →親しみ、自信をつける。
・ 48年間の教員生活。「ほかの人のいいところをいただいて自分を確立していった」。
(1) 松江第2中(9年間):生徒たちはひとなつこかった。
●米沢先生(数学)「計算こそ基本」(=数学がこわくなくなる)
●斉藤喜博先生(国語):戦後に3つの中学校で招聘した。
「机は動かして使うもの」=「コの字型にして子供同士が学びあうんだ」(佐藤学さんの学びの共同体でも行われている)
「全員が読めるようにならなくてはいけない」=先生はイスの上に立って、生徒はわからない字を指差してくるので、読んでやる→生徒は1回読むごとに東西南北に向き直って4回読んだら座って書き方を練習
(2) 武蔵野第4中:日野の公団にやっと当選。3時間通勤が大変なので校長先生に頼んだら「武蔵野の『学習院』みたいなところだよ」と言われて異動。
●森先生(国語)=先生の板書した美しい文字をまねる生徒たちはどんどん国語が好きになっていった
(3) 第2商業高校(17年間):この3月に閉校(3校で統廃合)のため、心のよりどころがなくなる寂しさを感じた。昔、校庭の草取りをするために毛虫を落とした思い出の桜の木が2倍の太さになっていた。学校生活を充実させることから愛校心が生まれる(毎年クラス会をしている)。
(4) 国士舘短大
(5) 拓殖大学

(3)学習の習慣づけ
・ 学習の習慣づけは最初が肝心:以下のような「キツイことを心を鬼にして言う」(教員として必要なのは、この「strictness」だと感じました。)
(1) ベルが鳴ったらすぐ自主的復習活動を始める
(2) 相手に、みんなに聞こえる大きな声を出す
「学習はみんなでするもの。大きな声を出すのが礼儀です」
(3) 家でも必ず教科書を開き、宿題をやる
(4) テープやCDに合わせて音読する
 「矢部先生は『読めるようにして(生徒を)帰せ』と言っていた」
(5) その日にやったことを必ずノートに記録する

(4)中学のリーディング(抜粋)
(1) 授業に必ずリーディングの復習(前年、前学期、前課…)を織り込む
 例) 中嶋先生(関西外語大)の合本=中学の教科書を重ねて糊付け→ペアで読む
(2)早口言葉や語呂合わせ=工夫すると覚えられる
 例)早口言葉で「月(January, February…)」「曜日(Sunday, Monday…)」をベートーベンの第五の出だしのジャジャジャジャーンの音程で言う。
 例)現在形三人称単数の-(e)sをつけるのは「ス、ズ、シュ、チ、ジ」
(★語呂合わせのおもしろエピソード:名和先生が大学の女子寮の舎監をしていたとき、玄関のカギの暗証番号4桁をどうするかをみんなで相談していたとき、大学で学んで疲れて帰って来たときこそ「いい女(1107)」とボタンを押したら、ちょっとうれしい気持ちになれると提案したら、採用されたそうです。名和先生のユーモアと学生への思いやりが感じられるお話でした。)

(5)高校のリーディング(抜粋)
・ 文型表をノートに貼って頻繁に参照
・ レッスンの柔軟な取り組み方:「内容本位か否か」「ワークシートの作り方」など「ていねいにする/サッとする」というメリハリをつけて時間を生み出す。
・ independent readerに育てる:投げ込み教材による一気読みなど。
例)題名がある+写真がある(そうでなくては読む気にならない)
=「先を読んでみよう!」になるように投げ込み教材を使おう
(英2をやっているなら英1を、英1をやっているなら易しい別の教科書を…)
●久保野先生:(1)内容語 (2)トピックセンテンス (3)設問を先に読む

(6)授業を改善するヒント
・ 論文「Communicative Approachの基本問題」から
(1) 「内容の読み取り(和訳)」と「語法と構文の解説(文法)」は同時にしない
(ご指摘の通りです。今後はごちゃまぜにしません!)
「人間の脳というのは、用語をきっちり頭に叩き込んでいきながら、しかも内容も同時にフォローしていくというふたつのことは同時にできないようですね」篠田顕子・新崎隆子『英語は女を変える』を引用。
(2)  書き言葉と話し言葉を区別してQ&Aを作る
 =硬い文語調の教科書の文をそのまま言語材料として、口語のQ&Aにするのは無理がある (このことに教員は気づくべきですね…)
例)堅い文語調
Columbus made four voyages to America. He reached the West Indies on his first voyage in 1942.
そのままQを作ると
How many voyages did Columbus make to America?となり、makeとvoyageの位置が離れるだけでなく逆になり、理解するのが困難。
例)やさしい口語調に書き換えると…
Columbus went to America by ship four times. He got to the West Indies first in 1942.
ここからQを作ると
How many times did Columbus go to America? Where did he go first? のように平易な文になりoral introductionにも使える。
(若林俊輔さんは「中2でも話し言葉と書き言葉の違いを教えなきゃ」とおっしゃっていたそうです。)

(7)スケルトン読み
・ Skelton Readingとは?:就職語句を省いて、文の主要素(主語・述語・目的語・補語)を拾い読んで概要・要点をつかむ方法。
(1) 「自動詞+前置詞」「be+形容詞+前置詞」などを他動詞とみる
 例)call on = visit、be fond of = like
(2) 「動詞句」は「中核語」で代表してもよい
 例)I’ll be glad to come →  I’ll come
(3) 「伝達動詞+that節」は「that節」のほうを重視する。ただし伝達部が肯定か否定かに注意。
(4) 「A but B」は「B」のほうを重視する。
★研修会の参加者全員に、ご著書『速読速解 スケルトン式英文リーディング』(桐原書店1300円+税)のプレゼントがありました! 名和先生、ありがとうございました。詳しくはこの本をご覧ください。

(8)参加者の感想
o「いさぎよくメリハリをつけて」「問題を投げつけてから授業に入ろう」という名和雄次郎先生のお話は私自身にも目から鱗でした。
o大変参考になりました。早速、授業の中で取り入れていけたらと思っています。スケルトン式リーディングは普段わずかながら自分でやっている実感があり、そのことを生徒に伝えたいと思っていました。しかし、方法がうまく説明できなかったので今後とても助けになりそうです。
o先ず、素晴らしい本のプレゼント、どうもありがとうございます。とにかく読む!! 読んでみる!! というのを生徒と一緒にやっていきたいと思います。長文食わず(読まず)嫌いの生徒に、上手に指導していけたらと思います。実際、TOFEL,TOEICなどを受験する場合、膨大な量の単語には対応できないので「スケルトン読み」になりますよね。
o大学の先生の講演はとかく現場から見て実際的でない話が多いが、現場に即した講話をいただけてよかった。音読指導は多くのパタンを用意し、あきないようにしていろいろ試しています。先生のお話を伺ってさらに「いくつかアイディアが浮かんできました。
o実用的で役に立つと思います。様々な授業の形がとても良かったです。様々な本をご紹介いただきありがとうございました。
o先生、大変勉強になりました。ありがとうございました。素敵な講演でした。英語2の授業に少しでも生かしていきたいと思います。英語リーディング指導のポイント5つについて、今の授業の点検材料にしたいと思います。
o基本は精読と多読、テキストによってメリハリをつけて努力することを再認識しました。有難うございました。
o内容を読み取るときに、つい構文の解説までやってしまいがちでしたが、今日のお話を聞いて、何もかもごっちゃにせず、ある部分を切り捨てる勇気も大事だと思いました。スケルトン式リーディングをこれからの授業に活用させていただきます。
o先生の著書までいただけて…、ありがとうございます! 今年度リーディングや英語2の授業を数多く受け持っています。しかし、毎日「これでいいのか」と自問自答しています。先生のご講演で何かヒントがつかめたと思います。ありがとうございました。
o英語の4技能をバランスよく、と考えても、リーディングに時間がかかりすぎてしまうことが多く、先生のお話をきき、教師が読む前にヒントになるものを与えることによって、ポイントを押さえて読むことが出来る、など勉強になりました。さらにいただいた本で勉強したいと思います。ありがとうございました。
o記憶の構造を再認識した。言語のredundancy(余剰性)については大学自体の講義を思い出した。
o「仮にABCをそれぞれ10回練習させたら、一旦何か別のことに気をそらせて(違う活動をさせて)から教師が手助けせずにABCを再生させる」という記憶強化の話が面白かった。「1107」で「いい女」というのも良かった。


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